2007年08月13日

立体世界の表現(パースを使った背景)

0807125.jpg


漫画家をめざす者ならば、パースには誰もが悩まされた経験があるのではないのでしょうか?
パースとは、パーステクティブ(perspective)の略で、美術用語で「遠近法」のことを指します。
漫画用語中では、さらに限定して「透視図法」のことを指すことも多いようです。

パースは、主に背景(とくに自然物以外)を描くときに役立ちます。
物の位置関係を正確に把握するには、必須ともいえるでしょう。
プロの漫画家さんのアシスタント募集要項にも「パースをある程度理解していること」などの条件が規定されていることが多いです。
そんな重要なパースを理解するためには、どういったものを参考にすればよいか?
わたしも色々な本を買ってみましたが、やはりこの本が一番理解しやすかったように思います。


パース塾―画力がメキメキUPする!いちばん簡単な遠近法講座
パース塾―画力がメキメキUPする!いちばん簡単な遠近法講座

パース塾2 実践編 いちばん簡単な遠近法講座
パース塾2 実践編 いちばん簡単な遠近法講座


この本は、アイレベルなどの基本事項から三点透視図法まで、各項目ごとに大きくページが割かれているので、とても理解しやすい構成になっています。
レベルもそんなに高くないので、初心者にもおすすめです。
1で基本事項を理解し、2で実践的なこと勉強すると効率的かと思います。
上の私の絵は、一番簡単な一点透視図法で描いたものですが、大抵の漫画背景は、一点、二点の透視図法で事足りると思います。
というか今の自分の力では、三点透視図法はまだうまく漫画の背景として活用できませんね…(苦笑)
いつかもっと複雑な視点からの背景を描いてみたいです。

また、背景の上達には、魅力的と思える背景に触れ、「こんな背景が描きたい」という意志を持つことが重要になってくるのではないでしょうか。
以下の本には、透視図法を応用した、魅力的な背景が描かれています。


時をかける少女ARTBOOK―山本二三と絵映舎の世界
時をかける少女ARTBOOK―山本二三と絵映舎の世界


この本には、名作アニメーション「時をかける少女」に使用された背景が収録されています。
彩色された背景画はもちろん、彩色前の線画も収録されていますので、とても勉強になります。
また、以下の本には、okamaさんの描く不思議な世界観の背景が収録されています。
こちらにも、パースが効果的に用いられています。
気に入った背景を模写(トレスではない)するなどすると、より力がつくはずです。


コミッカーズアートスタイル〈2〉世界観の見せ方
コミッカーズアートスタイル〈2〉世界観の見せ方


パースは奥が深いですが、まずは基本的な事をしっかり理解することが大切だと思います。
それから「こんな背景が描きたい」という明確な目標をもって、より複雑な背景へとチャレンジしていきましょう。
posted by 一〇 at 19:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 背景 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年05月12日

描き込みは伝わる2(フリーハンド背景のすすめ)

00209345.jpg

突然ですが、質問です。
あなたは普段歩いているとき、どちらを見ていますか?
(1)人
(2)景色


なんのこっちゃと思われるかもしれませんが、上記は漫画を描く人向けの、絵に関する簡易適性テストです。
(1)を選んだ人は、人物(キャラ)を描くのに適性があります。
(2)を選んだ人は、背景を描くのに適性があります。
…とまぁ、要は普段から何に意識を向けているか、ということですね。
そのちょっとした意識の積み重ねが、絵を描くときに、思いがけず生きてくるものだと思います。
かくいう僕は、人、とりわけ顔ばっかり見ています。
なので、人物(キャラ)の顔を描くことは、自分の中では比較的得意だと思っているのですが、裏を返せば、僕は背景を描くことは大の苦手です。
大嫌いだ、といっても過言ではありません。

背景を描くのが嫌いな理由のひとつに、「おもしろくない」というのがあげられます。
ちょっとパースがくるったり、線が曲がっていたりすると、もうおかしくなってしまう、その気難しさが駄目です。
人物などを描くときは、ちょっとした絵の歪みが、逆にいい感じに見えたりすることもあるのですが、背景を描くとなると、なんとなく予定不調和が許されない感じを持ってしまいます。
だいたいが大雑把な感じの僕は、なんとか背景を楽しんで描けないものかと苦心した結果、ある背景の描き方に注目してみました。
それは、細かいことを気にせず、フリーハンドで背景を描いてみる、というものです。
この手法は、割合のびのびと背景を描くことができるので、僕と同じような想いを持っている人にはおすすめです。
フリーハンドで背景を描いてみよう、と思ったきっかけはこの本です。


GOGOモンスター
GOGOモンスター


製作期間一年以上というだけあって、この本の背景は、松本大洋さんの著作品の中でも凝りに凝っていると思います。
フリーハンドで線もガタガタ、なのにアングルの妙によって、不思議と写実的に見えるその背景は、とても魅力的に思えました。
同時に、「こんな風景なら自分も描いてみたい」、そうも思えたのです。
しかし、定規を使わない、フリーハンドの背景は、松本大洋さんのようなちょっとアート志向の漫画家だから許されるんじゃないのか、メインストリームの少年誌では御法度なんじゃないのか、そういうイメージもあるかと思います。
しかし実は、これでもかというくらいメジャーな漫画で、フリーハンドの背景を使用している漫画もあるんです。


アイシールド21 (4)
アイシールド21 (4)


アイシールド21は、最近でこそ定規を使った背景であるものの、初期は実はすべてがフリーハンドの背景であり、絶好のお手本になります。
パースも糞もあったもんじゃない上の僕の絵で描いたものは、比較的フリーハンドで描きやすい木造家屋なのですが、アイシールド21の作画担当である村田雄介さんは、学校をはじめとするさまざまな背景を、卓越したフリーハンド技術で描き上げています。
なかでも、4巻の東京タワーは圧巻です。
こんな直線物の集合体を、よくフリーハンドで描く気になったなと、つくづく感心してしまいます。
村田さんの背景を見ていると、この人は本当に絵を描くことを楽しんでいるんだなぁ、というようなことが伝わってくるので、一見の価値アリです。

松本さんや村田さんの背景を見ているとよくわかるのですが、フリーハンドの背景のコツは、やはり“描き込むこと”です。
少々の線の歪みは、描き込みの中に紛らわせて、目立たなくしてしまえば良いのです。
(ただ、やはり簡単なパースなどは定規でとっておいたほうが無難です。)
しかし、定規を使いたくない、パースにこだわりたくない、というぐうたら精神から始まったのに、見栄えをよくするために描き込まなければならない、といった事態に陥ることは、少々本末転倒である気もします。
だからもうこれは好みの問題ですね。
きっちりパースをとる面倒さを選ぶか、描き込む面倒さを選ぶか。
僕自身は、断然後者の方が楽しんで絵を描くことができますが、もちろんパースをきっちりとって綺麗に仕上げるほうが楽しい、という人もいるでしょう。

「楽しむ」ということは、絵を描くことにおいて非常に重要な要素であると思います。
苦手なものを描くときは、もちろん真っ向から克服しようとする努力も大切なのですが、どうすれば楽しんで描けるか、ということを考えて努力するのもひとつの手なんじゃないかな、と思います。


posted by 一〇 at 04:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 背景 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年05月06日

描き込みは伝わる(見栄えの良い背景への早道)

00184.jpg


「描き込みは伝わる」

この言葉は、ご存知今一番売れている漫画であるONE PIECEの作者、尾田栄一郎さんが、絵を描く際に肝に銘じている言葉だそうです。
実際、描き込み過ぎてやや見にくいんじゃないか?というくらいの密度で構成された画面からは、著者の熱い想いのようなものが伝わってくる気がします。
あの大作家がこれほど描き込んでいるのに、僕たち下手糞が描き込まないでどうする、という話ですよ。
上の絵は僕が描いたものですが、よく見てもらえれば結構適当なんですが、パッと見はそれなりに見えると思います。
これは、描き込みによるところの効果が大きいんじゃないかなと思います(ほんとに大雑把な描き込みですが…)。
画面が埋まることによって、安定感が生まれているんですね。
人物ばかり描き込んでもサイズ的に限界があり、画面は埋まらないので、やはり描き込みは背景で稼ぐべきでしょう。

背景の基本的な技術として、遠近法はご存知でしょうか?
近くのものは大きく、遠くのものは小さく描く、というあれです。
おそらく誰もが知っている法則だと思いますが、実は遠近法はそれひとつではないのです。
以下に、知っておくと背景を描くのに役立つ遠近法をもう二つ挙げます。


●空気遠近法―近くのものは濃く、遠くのものは薄く描く
●消失遠近法―近くのものは詳細に、遠くのものは曖昧に描く


同じように聞こえるかもしれませんが、前者は色の濃さの問題、後者は絵の精密さの問題、です。
風景写真などを見ると、実際にそうなっていることが確認できると思います。
この二点を理解し、実践するだけで、背景がグッとそれらしくなるはずです。
二つの遠近法を意識して、色々描いてみましょう。
背景を描く上では、以下の本が参考になりました。
草、岩、家など、モチーフ別に描き方が説明してあるので便利です。


スーパーデッサン 風景編
スーパーデッサン 風景編


なお、背景の想像描きは、下手糞なうちは辞めておいた方が無難だと思います。
思い浮かべる背景に自信がないと、自信の無さげなおかしな絵になってしまいますし、第一しっかりした描き込みができないのです。
背景を描くときには、色々な資料や写真等を参考にして、しっかり描いていくほうが見栄えの良い絵に仕上がると思います。
背景の資料にするものは、自分で撮った写真なり、風景写真集なり、何でも良いと思いますが、なんと言っても背景資料の定番はこちらだと思います。


背景カタログ〈1〉学校編―漫画家・アニメーター必携の写真資料集
背景カタログ〈1〉学校編―漫画家・アニメーター必携の写真資料集

背景カタログ〈2〉街角編
背景カタログ〈3〉駅・乗り物編
背景カタログ〈4〉アミューズメント編―漫画家・アニメーター必携の写真資料集
背景カタログ〈5〉病院編
背景カタログ〈6〉飲食店編―漫画・アニメーター必携の写真資料集
背景カタログ〈7〉住宅編―漫画家・アニメーター必携の写真資料集
背景カタログ〈8〉緊急事態編―漫画家・アニメーター必携の写真資料集
背景カタログ〈9〉コンビニデパート編―漫画家・アニメーター必携の写真資料集
背景カタログ〈10〉自然編―漫画家・アニメーター必携の写真資料集
背景カタログ〈11〉空港・高速道路編
背景カタログ〈12〉街角編 2―東京主要スポット
背景カタログ〈13〉学園生活編


マール社の、背景カタログシリーズです。
いろいろな風景がいろいろな角度から撮られているので非常に便利です。
学校、住宅街、自然風景など、いろいろながシリーズが刊行されていますが、少年・少女漫画家希望者には、学校篇などは必須ではないでしょうか。
僕も学校を舞台にした漫画を描くことが多いので、シリーズ(1)と(13)はとても重宝しています。
(ただ、写真が若干古くさいのが難点ですが…)


写真から背景を描くのは苦手だという方にはこちらもおすすめです。


写真&線画 背景カタログCD‐ROM〈1〉住宅路上編
写真&線画 背景カタログCD‐ROM〈1〉住宅路上編


背景には、パースなどのいろいろな問題もつきまとってきますが、まずは描き込むこと、それが見るものを安心させる画面作りのためには、一番の早道だと個人的には思っています。
ただ、描き込み過ぎてキャラを潰してしまうことだけは、何より気をつけなきゃいけないことですが…。
posted by 一〇 at 05:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 背景 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする