2007年08月09日

かんたんクリンナップ(ライトボックスという秘密兵器)

鉛筆の下描きでは上手く見えるのに、ペンで清書するとなんかおかしい…。

漫画を描いていて、そういう想いを持ったことはないでしょうか?
そういう人は、まだペン使いの技術が未熟であるとともに、誤った線をペンで清書している可能性があります。
鉛筆で下描きを描く際、何重にも重ねて線を引いていませんか?
しかし絵として狂いのない線は、あなたが重ねて描いた線の中のほんのわずかな部分だけなのです。
それを、線のたくさんある下描きから見つけるのは至難の業だと思います。

そこで役立つのがこのライトボックスです。



コミックマスタートレーサー A4


コミックマスタートレーサー B4


デリーターライトボックスCF-B4




別名トレス台とも言います。
これはその名の通り、中にライト(電灯)が内蔵された台です。
この上で絵を描くと、ライトに照らされ、描いたものが見やすくなるという、シンプルながら効果は絶大なマシン(?)です。
おそらくほとんどの漫画家さんが所有しているのではないかと思います。
描いた絵を別の紙に写す、ということもこれがあれば簡単にできてしまいます。

このライトボックスを使うと、下描きの完成度をあげることができます。
これをクリンナップといいます。
文字通り「きれいに仕上げる」という意味ですね。
やり方は簡単、絵を写すのと一緒で、下描きの上に紙を一枚貼付け、ライトの明かりで透かされた下描きを鉛筆でなぞるだけです。
このとき、引く線はきれいな一本線のみです。
ここで多重線を引いてしまっては何の意味もありません。
そうして出来上がった絵を見てみれば、最初の下描きよりかなり完成度の高いきれいな絵に仕上がっているはずです。
(このとき、尖った鉛筆を用いると、さらに完成度は高くなります)
今度はそれを原稿に写すなりして、ペン入れをしてみましょう。
線の少ない下絵に、文字通りなぞるだけのペン入れを行えば、完成した絵は見違えるできばえになっていると思います。


070810.jpg0708101.jpg
上記は、私の絵によるクリンナップ例です。
左がクリンナップ前のラフ画、右がクリンナップ後の鉛筆画です。
線が少なくなることによって、ペン入れの精度がずいぶんと向上します。



こうしたクリンナップはかなり手間ですが、プロのイラストレーターさんなどは当たり前に行っていることです。
下記DVDで、人気イラストレーターokamaさんのイラスト制作風景には、実際にクリンナップの様子が収録されています。
また、このDVDは、イラストHow toものとしては出色の出来ですので、デジタルイラストに興味のある人などは持っていて損はないと思います。


デジ絵の文法
デジ絵の文法


もちろん、クリンナップはそれなりに手間がかかるので、時間との戦いとも言える漫画家の作画すべてにクリンナップを用いることは不可能に近いでしょう。
ですが、ここぞ、という場面を描くには、クリンナップは最適の方法だと思います。
下描きとペン入れ後の絵の完成度にギャップを感じている方は、是非クリンナップを試してみてください。
posted by 一〇 at 14:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 描画法概論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年05月05日

鉛筆描きで印刷してくれてもいいじゃないか(つけペンコンプレックス)

僕はペンをとって二年くらいになりますが、つけペン(漫画用ペン=Gペンや丸ペン)で絵を描くことが未だに苦手です。
コンプレックスと言っていいほどです。
ペン使いの下手な人が描いた漫画は、下描きの絵(鉛筆描きの絵)のほうがペン入れ後の絵より綺麗に見えるそうですが、僕もそんな感じです。
印刷の関係上、ペンを使っての清書は仕方のないことなんですが、鉛筆描きで印刷できたらどんなにいいだろうと常々思います。
しかし、漫画家をめざす以上、つけペンである程度の絵は描けるようになっておきたいものです。
そんなときに役立つのがこの一冊。


快描教室―きもちよ〜く絵を描こう! マンガの悩みを一刀両断!! ComickersMOOK
快描教室―きもちよ〜く絵を描こう! マンガの悩みを一刀両断!! ComickersMOOK


この本に「すいません じつはまだペンもうまくつかえないんです」という章があります。
ここに、ペン下手に非常に役立ち、しかも簡潔な助言が載っています。
それは二点。

(1)張るとこは細く、それを支えるところをつくる
(2)外形線は、内の線より心持ち太め

この二点を実行すれば、結構それなりの絵に見えます(本には図解付きで説明がなされているので、分かりやすいです)。
本当に上手くなるまでのしのぎの技、というか即効性のある技術ですね。
非常に役立っています。
この本は、上記の章だけでなく、漫画を描く際に全般的に役立つのでおすすめです。
著者の菅野博士さんの絵もうまいので、見ているだけでも飽きませんし、頭にも入りやすいと思います。

上記の本で即効性の技術を身につけた後は、それを本物にするために、ひたすらペンに慣れるしかないと思います。
以下の本には効果的なトレーニング法が解説されています。


マンガスタートアップガイド ペン&インク―トレーニングで上達するつけペン集中講座
マンガスタートアップガイド ペン&インク―トレーニングで上達するつけペン集中講座


巻頭には大暮維人さんのペン入れ風景が収録されていますが、レベルが高すぎてあまり参考になりません(笑)
自分なりにコツコツ頑張っていくしかないですね。
あとこの本には、どんな漫画家がどんな道具を使っているかが記載されていて、興味深いです。
個人的に好きな漫画家である冬目景さんの使用しているペンは、万年筆だそうです。
あぁ、あのザラザラした感じは、言われてみれば万年筆っぽいなぁと納得…。
まぁいざとなればつけペンにこだわらず、他のペンに変えるのもアリだということですね。
でもまぁそれはあくまで最終手段。


その他、個人的に気をつけていることは
●紙を回して自分の得意な向きのストロークで線を引く
●下書きはなぞれば終わりというくらい完成度の高いものを描く
●書き込んで線の汚さを誤魔化す
といったといった基本的なところでしょうか。
とにもかくにも、いつかはこの「つけペンコンプレックス」が治るよう、日々精進していきたいです。

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posted by 一〇 at 16:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 描画法概論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年05月04日

漫画絵好きはミュシャが好き(主線で見栄えが変わる)

漫画絵の好きな人間に、「誰の絵が好きか」を尋ねると、色んな漫画家さんやイラストレーターさんなど、だいたい今現在、漫画・アニメ業界で活躍されている人々の名が挙がるのですが、その中に1人だけ、美術史に残る名画家が挙げられることが多いのに気がつきました。
アルフォンス・ミュシャです。


アルフォンス・ミュシャ
アルフォンス・ミュシャ


なぜ、漫画絵を好む人間が、ミュシャのような画家を好むのでしょうか。
それは、ミュシャの絵と漫画絵に、はっきりとした共通点があるからだと思います。
それは、(主として人物の)主線が明確に描かれているということです。

普通一般的な美術の絵というものは、明暗をもって描かれます。
光と影で、もののかたちをあぶり出している、とでもいうのでしょうか。
一方漫画絵では、もののかたちの輪郭をはっきりとした線で表現します。
ミュシャの絵は、その人物造型こそ、デフォルメのないリアルなもので、漫画絵とは相反していますが、その主線は見事にくっきりと描かれています。

では、主線を明確に描くことでどんな効果が生まれるのでしょうか。
一番はっきりしていることは、絵にメリハリがつくことだと思います。
主線は絵を、分かりやすく引き締めます。
主線に囲まれた絵は、「自分が主人公である」とばかりに、自己主張をするのです。


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上記二つの絵は、基本的には同一のものですが、左の絵は、光を意識してやや主線がぼんやり描かれています。
これはいわば、「人物」の他に、「光」という背景が意識された絵になっていると思います。
対して右の絵は、主線がはっきりと描かれており、より漫画絵に近いものになっています。
これはもう「人物」そのものにスポットライトを当てた絵ですね。
背景は「光」ではなく、もうただの「白色」といった感じになります。
個人差はもちろんあるかと思いますが、やはり漫画絵好きの方には右の方がしっくりくるのではないでしょうか。
右の絵は「人物」をより強く意識した絵になっており、これは漫画で、背景よりもキャラの主線を太くして見やすくする、という技術に繋がっていくものだと思います。

このように、漫画絵好きに好かれている絵描きとしては場違いに思えるミュシャの絵は、あらためて主線の効果をはっきりと示してくれます。
ひとつの線で見栄えが変わるのですから、やはり絵というものは奥が深いですね…。



あと余談になりますが、僕は画家の中では、彼が一番好きです。
彼の絵の技法を漫画に流用できないか、鋭意模索中です。


西洋絵画の巨匠 (1) モネ
西洋絵画の巨匠 (1)   モネ
posted by 一〇 at 05:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 描画法概論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする