昔、僕の通っていた学校の美術の先生が「手を描こうとする人間はうまくなる」と言っていましたが、なるほど、手のように複雑なかたちを捉えようとする意識があれば、自ずともののかたち全体を認識する力も鍛えられるというものでしょう。
あなたの描く人物の手は、おざなりに描かれてはいないでしょうか?
手をうまく描くのに早道はありません。
とにかくしっかり数を描いて、まずは全体的なフォルムを感覚的に覚えましょう。
もちろん自分の手を見て描くのもよいのですが、おのずとポーズは限られてきます。
そんなときは、しっかりとした参考資料を書き写すのもおすすめです。
やさしい顔と手の描き方
この本には、色んな手のかたちが、正確なデッサンによって描かれているので、まさに手を描く際の格好の資料といえます。
また、普通の手だけではなく、子供の手や赤ちゃんの手、さらには老人の手に至るまで、色んな年齢層の手が掲載されているのでかなり役立ちました。
手の資料としては、こちらもおすすめです。
スーパーデッサン 人物〈3〉顔と手の表情篇

こちらは手の描き方も詳細に載っています。
ものを食べるときの手、電話をかけるときの手など、場面別の手の動きも掲載されているのも便利です。
しかし、どちらも読んだだけでうまくなるということはないので、やはり数をこなすことが大切です。
一日ひとつは、必ず手だけの絵を描く習慣をつけるといいと思います。
個人的に、手を描く際にとくに意識すべきだと思ったことは、“親指以外の指の関節は二つある”ということです。
当たり前といえば当たり前のことなんですが、手を描くことに慣れていないうちは、案外忘れてしまいがちな事実です。
この点を意識して、手の全体的なかたちをつかんでいけば、自然と上達していくんじゃないかなと思います。
ところで、ときどき小指をたててコップなどを持つ人を見かけることがありませんか?
小指って、手のひらのはしっこでひっそり佇んでいるような地味なイメージもあるかと思いますが、じつは何気ない瞬間に、結構自由な動きをしているように思うんです。
中指、薬指は、たいてい人さし指からの流れを汲んだ、規則的な動きをしているのですが、小指だけは大胆な動きをしているんじゃないでしょうか。
もちろん本人は、小指を動かそうと思って動かしている訳ではないのだと思います。
つまり、この小指の自由な動きを意識して描くと、何気ない瞬間の、より自然な感じの手になるのではないでしょうか。
上の絵の左側の手は、右側の手の小指を、少し大胆に動かしたものです。
どうでしょう、そんなに変わらないといえば変わらないのですが、小指に動きが発生した効果で、少しだけ自然な感じの手になりませんでしたか?
さらにもう少し詳しく言えば、左側はちょっとした目的意識のある、ぴしっとした手、右側は何気ない瞬間の、気の抜けた自然な手、といった感じになっているのではないでしょうか。
僕が見る限り、うまい絵描きさんが描く何気ないシーンの人物の手は、やはり小指が自然と自由に動いている気がします(特に女性の指)。
上にあげた本のタイトルが示すように、手は、顔とならんで複雑、かつ重要な部位だと思います。
より魅力的な人物を描くためには、魅力的な手を描くことが、不可欠なのかもしれないですね。

















